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ブログ
5.42020
Aroma Voyag 旅の記憶を巡る香り
岩根つつじ
京都スィーツ旅と称して、老舗の和菓子屋さんを何軒か訪ねたのは5月の上旬でした 鶴屋吉信さんの「菓遊茶屋」で職人さんが目の前で生菓子の実演をしてくださり、出来上がった生菓子をお抹茶とともにいただけるという なんとも贅沢なひと時 この時は5月を代表する「岩根つつじ」でした この和菓子は軟らかな飴(きんとん)で出来ています きんとんとは、練った小麦粉に砂糖や飴を入れたもので、それを着色してから、ざるで裏ごしして「そぼろ状」にします。ざるの目の大きさによって、細くなったり、太くなったりと、様々な表情のきんとんになるのです 「岩根つつじ」も核になる餡の周りに2色のきんとんを飾り、山の岩根に咲いているつつじを表現しているのです 職人さんの美しく手早い見事な技であっという間に出来上がりました 上品で甘く深い味わいに大満足でした

ツツジは「躑躅」と書きます もともとは「羊躑躅」と言わる中国原産の Rhododendron molle (var. molle) 、和名 トウレンゲツツジ(黄い花の種類)の葉を羊が食べたところ、2~3歩行っては立ち止まる という動作を繰り返しているうちに死んでしまうということから由来している。毒性が確認されているのはこの種類だけで、私たちの目を楽しませてくれる多くの種類には毒性はないのです
ツツジとサツキの違い
ツツジもサツキやヤマツツジ、レンゲツツジなど、シャクナゲよりも葉が薄くて、枝が細い落葉または常緑のツツジ属の総称です。サツキはヤマツツジの渓流型と考えられ、葉は常緑、増水時に流されないように葉が細長いのが特徴です
歴史から見ると
江戸中期の1692年に江戸で「錦繍枕(きんしゅうまくら)」というツツジの種類や栽培を解説した世界初の専門書が「伊藤伊兵衛」によって版行されました 当時は「元禄のツツジ」と呼ばれる流行の最中であり、さまざまな品種が作出されました 江戸中期は、戦の心配もなくなり、人々の暮らしが豊かになった時代であり、余暇の楽しみとしてさまざまな植物の品種改良や栽培が流行し、現在の園芸の基礎が築かれた時代でした。「錦繍枕」は5巻からなり、3冊が「躑躅(ツツジ)」、2冊が「サツキ」という構成になっています。その中で、いわゆる「ツツジ」は春(旧暦1~3月)に咲き、「サツキ」は初夏(旧暦4月)咲くと記されています。現在の4~5月中旬に開花するものを「ツツジ」、5月下旬から6月に開花するものを「サツキ」と呼びはじめたのではないかと考えられます
岩根つつじの思い出の香り
トップノート・・・バーベナ
ミドルノート・・・ネロリ プチグレン
ペースノート・・・シストローズ トンカビーンズ

山の岩根に咲く新緑とつつましいつつじの芳香初夏の爽やかな風に薫る 老舗の職人さんの誇りと技を内包した和菓子の香り